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掲載日:2017年8月17日

木造住宅の耐震性

熊本地震での倒壊の明暗は?

平成28年4月に発生した熊本地震をはじめとして近年頻発する大地震により、お住まいの木造住宅の耐震性に疑問を持たれた方は多いのではないでしょうか?また、疑問を持つものの、はじめの一歩が踏み出せず、何も対策を行わないまま時が過ぎている方も多いのではないでしょうか?熊本地震では多くの木造住宅が倒壊し、旧耐震基準の住宅だけでなく、新耐震基準を満たした住宅でさえも倒壊被害を受けてしまいました。その原因は何だったのでしょうか?

その疑問に答えるため、木造住宅の耐震性について基本となる情報、耐震補強、熊本地震における住宅の倒壊、その対策についてという流れで順に掲載をします。興味を持たれている方は、今後も更新していく予定(不定期)ですので、ぜひ目を通してみてください。

1.建物の耐震性

1-1建物の構造計算

現在、日本の住宅において主に用いられている構造は、木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート構造の3つです。これら住宅の耐震性についてですが、木造住宅(一般的な規模)の場合、壁の量や配置(壁量計算)によって決まります。木造住宅(大規模、特殊な構造)、鉄骨造、鉄筋コンクリート構造の場合は、構造計算によって決まっています。

木造住宅(一般的な規模)の場合であれば、数値上においてはどの建物も、これら計算に基づいて設計すれば耐震性を同等にすることができます。

1-2基本的に、建物の重量が軽ければ揺れにくい構造となる

構造において、建物の重量は重要な要素です。
地震エネルギーは、基本的には、建物の重量に比例して大きく働きます。つまり、重い建物ほど、地震によって大きく揺れることになります。

建物自体の自重は、鉄筋コンクリート構造>鉄骨構造>木造の順になります。

建物の大きさが同規模の鉄筋コンクリート、鉄骨、木造の建築物があった場合では、一番軽い木造住宅がもっとも揺れず、重い鉄筋コンクリート造では強い構造にしないと被害が大きくなることとなります。

2.耐震性はなにで決まるのか(木造住宅)

木造住宅の耐震性は、2階建てかつ面積500平方メートルまでの規模であれば、壁量計算によって決まります。3階建てからは、確認申請の際に鉄骨構造や鉄筋コンクリート造と同様、構造計算が求められます。ここでは、木造住宅の中でも一般的な2階建(軸組構法)について記述させていただきます。

以下は木造住宅の構造計画及び長期優良住宅の設計・実務者講習会マニュアル(編集・発行全国建設労働組合総連合)(外部サイトへリンク)を参考とし抜粋しておりますので、こちらの本篇をご覧いただくとより深く理解できます。

2-1壁量のチェック

1建築基準法の必要壁量(PDF:87KB)

地震力に対する壁量計算

必要壁量は床面積×壁係数となっており、その必要壁量は、X方向・Y方向各階必要となります。これは地震力に対する壁量計算です。建築基準法ではもう一つ、風圧力に対する壁量計算も必要です。

風圧力に対する壁量計算

見附面積を1階、2階それぞれX方向、Y方向計算し、風圧力の壁係数を掛け合わせて、必要な壁量を算出します。

 

2存在壁量の計算(PDF:832KB)

壁長さに壁倍率を掛け合わせたものが存在壁量です。

軽い建物と重い建物では必要壁量が異なります。地震時には軽い建物の方が壁量が少なくてもよい計算になります。これは、日本瓦等の重い建物が地震時に不利というわけではなく、多くの壁量が設計施工上必要となるということです。

3、4、5(省略)

2-2バランスのチェック

各階の平面を短冊状に4等分したときの両端の壁の充足率(存在壁量/必要壁量)が共に1を上まわるか。又は、両端の壁量の充足率を比べたときに、小さいほうが大きいほうの0.5以上であれば、バランスがよいと判断します。

1バランスのチェック(PDF:219KB)

バランスのチェックは建築基準法でも求められています。

2バランスのチェック方法(PDF:964KB)

3壁率比(PDF:264KB)

バランスチェックしてNG(耐力壁が一つもない場合を除く)の場合は壁率比を計算して、その値が0.5以上であれば、バランスチェックはOKとなります。

4構造ユニット(PDF:235KB)

5柱の直下率、壁の直下率(PDF:346KB)

柱の直下率とは、『2階の柱のうち、1階柱に一致する割合』のことです。その割合が50%以上であれば、耐震的に配慮されているとみなされます。壁の直下率とは『2階の間仕切壁のうち、1階の間仕切壁に一致する割合』のことです。その割合が60%以上であれば、耐震的に配慮されているとみなされます。

2-3耐力壁線のチェック(PDF:2,279KB)

 

2-4水平構面のチェック(PDF:637KB)

 

2-5接合部のチェック(PDF:789KB)

 

2-6基礎と横臥材のチェック(PDF:100KB)

 

3.お住まいの住宅の耐震性の確認方法

2.の内容は、新築で建築する際や増築する前に確認することです。すでに住んでいる住宅については、別の方法で耐震性を確認します。耐震性の確認を『耐震診断』と言います。人間の体で例えると健康診断のようなものです。自分で行う方法と、専門家に耐震診断を行ってもらう方法があります。

3-1自分で行う方法

自分で行う耐震性の確認は、専門家へ相談すべきか、そのままでも大丈夫かをおおまかにつかむために行うものです。

「誰でもできるわが家の耐震診断」日本建築防災協会(国土交通省住宅局監修)(外部サイトへリンク)を利用してみましょう。

このサイトでは、リーフレットをダウンロードして記入したり、インターネット上で耐震性の確認もできるようになっております。
この診断を行うことで、お住まいの住宅のどういう点が地震に対して弱いのかをおおまかに確認することができます。対象は2階建てまでの木造住宅で、耐震性能を簡易的に確認し、各項目の評点を合計して、ご自宅の耐震性を判定します。
確認項目は、建てた時期、災害経歴、増築経歴、傷み具合や補修・改修、平面形状、大きな吹き抜けの有無、1階と2階の壁位置の関係、壁の配置バランス、屋根材、壁量、基礎の形状について評点を付け合計点で判断する方法です。

結果がよくても不安な箇所があれば、専門家の診断を受けることをおすすめします。

3-2専門家に耐震診断を行ってもらう方法

自分で簡易に診断を行えるとはいえ、すでに完成している建物は、専門家による耐震診断を受けることが重要です。

市でも市民の皆様のサポートを行っております。
1.耐震診断技術者派遣制度(耐震診断技術者が派遣され、耐震診断を行います。)

2.耐震診断費用補助制度(耐震診断技術者が、耐震診断を行います。診断にかかった費用の一部を補助します。)

この二つの事業は建築士の資格を持つ方が愛媛県実施する耐震診断に関する講習を受け「愛媛県木造住宅耐震診断事務所」の登録をされた方がお伺いいたします。建築設計と耐震診断の知識を持った人しか取得できないものですので、安心してご利用ください。

専門家による診断の結果、耐震性があると判断されれば、一応安心できますし、耐震性がないと判断されれば、『補強するのか、改築するのか等次何をすればいいか』について、ご家族の間で話合いができると思いますのでご利用ください。

4.耐震補強について(後日掲載予定)

5.さいごに

熊本地震の被害状況から見えてきたことは、『倒壊家屋の多くは、旧基準建築物であれば耐震補強のされていない建築物、新基準であれば今の基準を遵守せず施工された建築物が多く倒壊していた。』実態でした。その対策の注目点は、今まで大規模な震災の度、改正されてきた建築基準を改正するのではなく、基準遵守が重要であるというということです。その具体策は2点

  1. 耐震改修促進法で示されている旧基準(昭和56年6月以前着工)で施工された住宅・建築物の耐震診断・補強の必要性
  2. 建築基準法は最低限のルールであり法の細部までの遵守

ということが言われ始めておりますので、念頭に置いて生活していただけたらと思います。

以上で終わりとなりますが、ここまでご覧いただきましてありがとうございました。

建築士におかれましては、構造基準を中心とした建築基準の知識の向上に努め、施工業者におかれましては、単に設計どおり現場をすすめるのではなく、建築士が知らない部分についても改良案を出し、よりよい建物が完成されるよう建築基準の知識の向上に努め、市民に安心される技術を持つため日々努力する業者を目指していただけましたら幸いです。市民のみなさまにおかれましては、基本的な知識を持つことは自分を守ることにつながると思います。未だに施主が設計・工事現場を知らないことをいいことに、高額な請求をふっかける悪徳業者も存在しておりますので、十分ご注意ください。

 

お問い合わせ

産業建設部都市整備課建築担当

伊予市米湊820番地

電話番号:089-982-1111

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